テラスで椅子に腰かける王ランジート・シング
てらすでいすにこしかけるおうらんじーとしんぐ
概要
インドでは、インド神話や、シヴァ神、ヴィシュヌ神などのヒンドゥー教の神々、王の肖像や歴史的なエピソード、男女の恋愛などさまざまなテーマを緻密なタッチと鮮やかな色彩で描いた、細密画(さいみつが)とよばれる絵画のジャンルが発達しました。多民族国家であるインドでは、細密画の表現も地域によってさまざまで、それがまた魅力であるともいえます。
これはシク王国の初代の王であったランジート・シングを描いた細密画です。
シク王国は19世紀前半、パンジャーブ地方を中心にインド西北部を支配したシク教徒の王国です。
ランジート・シングは、パンジャーブ地方におけるシク教徒の小国の一つを治めていた首長の子として1780年に生まれました。1790年代前半に父の跡を継ぎ、首長となると、パンジャーブ地方にあったシク教徒の小国を統一していきました。さらにランジート・シングは、パンジャーブ地方の安定を図るために、当時この地域に侵攻していたアフガンの勢力を一掃することに力を注ぎます。ついには1801年にパンジャーブ地方にシク王国を建て、その王となったのです。
この絵からは、画家が長いあごひげをたくわえたランジート・シングの独特な顔だちの特徴をよくとらえようとしたことや、あたかも神像のように頭の後ろに光の広がりを描いて、王としての尊厳を表わそうとしたことがうかがわれます。