富士見業平柳川櫛
ふじみなりひらやながわくし
概要
象牙製、閑清形、角棟の挿櫛である。閑清形は、『玳瑁亀圖説』によると天保年間(1830~44)に流行したとされる。象牙を紅で染め、撥彫(はねぼり)と平蒔絵で富士見業平を表す。この技法は奈良時代の撥鏤(ばちる)に似たもので、幕末の櫛や紅板などにみられる。由来不明ながら「柳川」と呼ばれ、実際「柳川」在銘品が散見され、本作にも「柳川」の銘がある。花柳章太郎(1894~1965)の旧蔵品で平成15年(2003)に遺族の青山久仁子氏より国立劇場へ寄贈された。