歌舞伎図巻
かぶきずかん
概要
出雲阿国が、慶長八年(一六〇三)京都で始めた派手で異様な扮装を特色とした「かぶき踊り」は、たちまち流行となり、多くの追随者が生まれた。本図の主人公采女もその一人である。京都の四条河原で評判を得た次第が記され、五種の歌謡の詞書とそれに対応する踊の図が続き、最後に歌舞伎礼賛の詞と釆女が男装して踊る場面が描かれる。初期の「かぶき踊り」の様相が知られるばかりでなく、南蛮人や楽屋内での食事、門前の物売りなど当時の風俗を知る上でも貴重な作品である。本図に使用された料紙の装飾法は、慶長期に製作された「稲富流砲術伝書」(大和文華館蔵)の見返しや「伊達政宗書状 ローマ法王宛」(ヴァチカン図書館蔵)のうちラテン文の料紙と同工房とみられ、本作品もこれらとほぼ同時期の作と考えてよい。
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