多感な地上
概要
129 浅原清隆(1915−1945) 多感な地上 1939年
兵庫県生まれ。1934年帝国美術学校入学。在学中の35年第22回二科展初入選。シュルレアリスムに関心を持ち、同級生らと36年グループ「表現」を結成。37年第7回独立展入選。38年創紀美術協会結成に参加。39年美術文化協会の結成に参加。同年、神戸で個展を開催するが、まもなく応召し、45年ビルマ(現ミャンマー)で行方不明となる。
この作品は浅原が美術学校を卒業する頃に描かれた。中央で物思いに耽る少女の頭のリボンは、頭上の二羽の鳥と呼応するかのように変容し、どこかに飛び去ろうとしている。手前に散らばるハイヒールは、彼女の“未来”、つまり大人の女性になることへの期待と不安を象徴しているように見える。一方、地平線の彼方には、自転車にのる子供など“過去”の記憶のイメージが見える。過去と未来の間で揺れ動く少女の“現在”の姿に、おそらく浅原は自らを投影したのであろう。一見抒情的な画面に、戦時下の若い画家の切実な心境が読み取れる。