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三保松原

みほのまつばら

主情報

記載物件名
三保松原

解説

詳細解説

三保松原は、富士山頂の南西約45kmに位置し、駿河湾に臨んで豊かな松林に覆われた砂嘴である。砂嘴の総長は約7kmに及び、その上に約5万本のクロマツが約4.5kmにわたって叢生している。富士山と関わりがあるされる天女と地元の漁師との交流を描いた「羽衣伝説」の舞台として著名であり、特に「羽衣の松」の付近は海浜の松原越しに富士山の形姿を望む風致景観の優秀な場所として知られる。また、「羽衣の松」から9世紀の創建とされる御穂神社に至るまで、「神の道」と呼ばれる松並木が連続している。御穂神社の神事の際には、御神木である「羽衣の松」を目印として、海から来訪する神を迎え、その後に「神の道」を経て神社へと導く。 日本最古の詩歌集である『万葉集』が8世紀に編纂されて以降、三保松原は歌枕として数多の和歌の題材となった。また、その後には、「羽衣伝説」を題材として15世紀に制作されたとされる謡曲『羽衣』の舞台ともなり、富士山を仰ぎ見る場所として日本人に深い印象を与えた。19世紀後半になると、謡曲『羽衣』は海外にも伝えられ、イェーツ(1865~1939)及びパウンド(1885~1972)など西洋のモダニズムの作家の作品にも取り上げられた。それは、日本の伝統芸能である「能」が世界に広まる契機をもたらした。 さらに16世紀以降の絵画の分野においても、三保松原は富士山を描く際の典型的な構図に含まれる景勝地として認識されるようになり、歌川広重(1797~1858)等の絵画作品をはじめ、海外にも著名な芸術作品の視点場又は舞台として知られるようになった。