文化遺産オンライン

世界遺産と無形文化遺産

青岸渡寺

せいがんとじ

主情報

記載物件名
青岸渡寺

解説

 青岸渡寺の創立は、5世紀前半にインドから熊野に漂着した僧が那智大滝で観音菩薩を感得したことに始まり、その後、784年まで宮都があった大和国から僧が来訪し、如意輪観音像を彫刻し本尊としたと伝えられる。熊野那智大社に隣接し、1868年の神仏分離令以前は、那智の「如意輪堂」として熊野那智大社と一体の寺院として発展してきたもので、神仏習合の形態を良く保っている。  青岸渡寺本堂は、日本を武力統一した大名が1590年に再建した素木造の壮大な建築で、本尊・如意輪観音が出現したと伝えられる那智大滝を拝する向きに建てられている。この堂は、1161年に成立した「西国三十三ヵ所観音巡礼」(西国巡礼)の第一番霊場となっており、内部には多数の参詣者が礼拝するための広い空間が設けられている。西国巡礼は、観音菩薩が三十三の姿に変化して人々の願いを聞き届けることに因み、霊験あらたかとされる三十三の観音霊場を巡礼するもので、奥駈に引き続く修験道の修行の一環として行われたものである。民衆が西国巡礼に参加するようになる15世紀以後は青岸渡寺への巡礼者が増加し、17世紀以後になると全国から多くの巡礼者が訪れるようになった。また、本堂の北にある宝篋印塔は、総高が4.3mの大型の石塔で、1322年に尼僧が願主となって造立した旨の銘文が刻まれており、美術的にも優れた石造構造物として貴重である。