ブロンド
概要
125
ブロンド
B1onde
1913(大正2)年
ブロンズ 高47㎝
bronze
藤川勇造は、晩年のロダンにその才能を認められ、ロダンに師事するとともにその助手をつとめた。ロダンの作風はすでに荻原守衡によって伝えられたが、ロダンに直接師事した日本人はただ彼一人であったろう。彼はロダンから彫刻の本質的な要素を吸収すると同時に自らの個性を生かすことも学んだと思われる。有島生馬が「ロダンの高揚した浪漫精神と、藤川の謙譲な写実主義とは根本的に相異したヂェニーのやうに思はれるのである」と述べているように、彼の才質はロダンとはおそらく対蹠であり、ロダンのアクセントの強い肉付けや激しい動勢表現は彼の作品には認められない。ロダンに師事したのちにつくられたこの〈ブロンド〉にすでに見られるものは、堅実な量感把握と柔軟でねばり強い肉付けに示されている穏やかで誠実な対象への接近態度である。この作品は作者愛蔵の滞欧作で、ブロンズ鋳造によって感じが変わるのを嫌い石膏のまま保存されていたという。なお白銅製鋳造作品が東京国立博物館に所蔵されている。