月出の中央構造線
つきでのちゅうおうこうぞうせん
概要
中央構造線は、関東から中部・近畿・四国を経て九州まで、ほぼ東西に連続する我 が国第一級の大断層であり、延長は1,000kmにも及ぶ。地質学的には、断層北 側の西南日本内帯と呼ばれるカコウ岩を主体とする地域と南側の西南日本外帯と呼ば れる変成岩地域の境界を成す断層である。活動時期は約1億年前の中生代白亜紀に遡 るとされ、我が国の成り立ちを語る上で欠かせない。
中央構造線は、地形的にも顕著であり衛星画像などでも明瞭に捉えることが出来る。 特に長野県茅野市から静岡県水窪町に至る南北の谷、和歌山県の紀ノ川、徳島県の吉 野川から石鎚山脈の北縁に沿う地域では顕著な直線上の地形を示す。この地形的に顕 著な地域は、中央構造線の最近の活動が活発な地域と一致する。この地域での中央構 造線は右横ずれ成分が卓越し、千年あたり数mの変位量を示す活断層である。
「月出の中央構造線」は、奈良県境に近い三重県飯高町にある。断層露頭は高さ約 80m、幅約50mに達する。この断層露頭は、平成7年度からの三重県治山事業に よる土砂の除去作業により出現したものである。断層面はほぼ東西で北に60度程度 傾斜する。断層を挟んで北側は西南日本内帯に属す、白色のカコウ岩類、南側は西南 日本外帯の黒色の変成岩類で、色彩の違いからも断層が簡単に認識できる。
三重県地域での活動度は低いものの、「月出の中央構造線」では、西日本を地質学 的に二分する大断層である中央構造線が明瞭に認められる。観察路や説明板などの整 備も行われており、安全に観察できる。天然記念物に指定し永く保存を図るものであ る。