隠岐の田楽と庭の舞
おきのでんがくとにわのまい
概要
島根県隠岐の島には、重要無形民俗文化財「隠岐国分寺蓮華会舞【れんげえまい】」(昭和五十二年五月十七日指定)はじめ古風をとどめた芸能が伝承されているが、これもその一つであり、島前の西ノ島に伝わるものである。
美田八幡宮の祭礼と日吉神社の祭礼は、西ノ島町のほぼ同一地域に隔年で行われ、両祭礼では内容の類似した芸能が上演されている。美田八幡宮の方では『田楽』の名称のもとに「神の相撲」「獅子舞」「田楽躍」が、また日吉神社の方では『庭の舞』の名称のもとに「庭の舞」「神の相撲」「田楽躍」が、それぞれ奉納されている。
今回は、これら田楽躍、庭の舞、神の相撲および獅子舞を以下の理由により指定するものである。
美田八幡宮の『田楽』
西ノ島町美田尻【みたじり】に鎮座する美田八幡宮の『田楽』は、種々の文献や当社に所蔵されている棟札【むなふだ】の記載内容から、室町時代末期にはすでに行われていたものと考えられる。
八幡宮で行われる祭礼は、美田郷全体の祭りとして郷内の七里(美田尻、大津、大山、小向、船越、波止、一部)の氏子が、舞、囃子、舞台・楽屋作りその他の諸役を分担して執り行ってきた。八月の末に諸役の分担を決め、九月一日から十四日まで大津にある長福寺(美田八幡宮の別当寺)で練習を行い、十四日笠揃いと称して祭礼時と同様の衣装をつけ、長福寺の境内で獅子舞と田楽躍の試演を行う。九月十五日の祭礼当日は、朝、一同八幡宮に参集し、舞台や楽屋作りを行い、祭典の後、舞台上で、「神の相撲」「獅子舞」「田楽躍」を順次執り行う。当地ではこれらの芸能を総称して、『田楽』または十…