石井の七福神と田植踊
いしいのしちふくじんとたうえおどり
概要
これは、初春に家々を訪れ、その年の稲作や養蚕が豊饒であることを祈り、主に踊りの形で田植などの稲作の耕作過程を模擬的に演じてみせて祝う東北地方特有の田植踊の一つである。
福島県二本松市の旧石井村の鈴石東町・錦町・北トロミに伝承されている当芸能は、もとは旧暦の小正月に集落の各家々を巡って行われたが、今日では正月の年重ねの祝いの席に依頼されたりして踊られている。この芸能は当地方田植踊の特徴である七福神が登場する次第の後、田植踊の一行が舞い込む形で行われる。七福神は、初めに先導役の稲荷が登場し、続いて昆沙門天、弁財天、布袋、福禄寿、寿老人、恵比須、大黒天の七福神が次々と舞い込んで、祝福の寿ぎをする。道化役(ヒョットコ面)二人が、おどけたしぐさで注連縄と蚕のまぶしを編み、稲作、養蚕が順調に進行することと豊饒を祈願する。その後七福神が退場する。引き続いて田植踊の一行が登場する。早乙女(手甲、たすきがけ、花笠をかぶり、扇子を持つ)四人、奴(手甲、たすきがけ、はちまき姿に軍配を持つ)五人、先導役の山大人(久六とも)(竹杖を二本持つ)一人、その他の役の者が登場し、久六の指図にしたがって「かながせ」「ごようまつ」「祝の田植」の正月の祝い踊りが踊られ、その後、田うないから米搗きまでの稲作の各耕作過程の模擬的所作を伴った踊りがあり、秋の取り入れ祝いの「鶴どの亀どの」などを踊って終わる。また余興の小歌踊りが行われることもある。
当伝承は、わが国予祝芸能の一類として特徴のある東北地方の田植踊の典型的なものとして芸能史的に貴重であり、また田植踊に先立って七福神の舞い込みが行われる点に地方的特色が顕著である。
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