象嵌彩窯変磯蟹大皿
ぞうがんさいようへんいそがにおおざら
概要
今井政之の作品には植物や動物、昆虫の明るい生命感が描き出されています。中でも、幼い頃から親しんだ、故郷の瀬戸内海に住む生物たちの表現は、ことのほか耀いています。「モチーフの表情が生き生きしているとしたら、実際に海に潜ったりして生きている様子をよくスケッチしていたからでしょう」とのこと。備前の粘土に色土を埋め込んで、たゆたう磯に集う蟹を描いたこの作品には、牧歌的な瀬戸の一コマが切り取られています。
作者は大阪府に生まれ、父の故郷・竹原市に疎開し、広島県立竹原工業学校を卒業。陶芸家を志し、備前で修業後、京都で研鑽を積み、素朴な備前焼と雅な京焼を融合させた独自の作風を創出しました。日展を中心に活躍し、平成15年芸術院会員に。独自に完成させた多色粘土の象嵌による写実的な表現に定評があり、さらに、竹原市に築いた薪窯による焼成で、窯変(ようへん、火炎による色彩変化)の深い味わいが加えられました。