思子淵神社 本殿
しこぶちじんじゃ ほんでん
概要
思子淵神社は,琵琶湖に注ぐ安曇川の支流,針畑川流域の山間部に所在し,筏流しによる木材搬送の守護神とされる思子淵神を祭神とする。覆屋内に中央が本殿,南に蔵王権現社,北に熊野社の三棟が並んでいる。蔵王権現社は板札より応安4年(1371)の建立で,他の二棟も同時期とみられる。いずれも一間社流見世棚造で,部材の大面取,ヤリガンナ仕上げなどの技法に,中世の特徴がみられる。思子淵神社は,室町前期に遡る三棟の社殿を一体的に残す極めて稀な遺構であり,我が国の中世神社建築において重要である。安曇川流域において,独自の発展を遂げた思子淵信仰の様相を良好に伝える点でも,高い価値が認められる。