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版経断簡「春日版 / 大般涅槃経(巻第三十一)」

だいはつねはんぎょう

概要

版経断簡「春日版 / 大般涅槃経(巻第三十一)」

だいはつねはんぎょう

/ 鎌倉 / 日本

鎌倉時代/1185~1333

「大般涅槃経」
大涅槃経、大本涅槃、北本涅槃、涅槃経ともいう。阿含部に同名の経典(小乗涅槃経)があるので、それと区別するため大乗涅槃経ともいわれる。
【成立】
本経の原典は、小乗涅槃経を素材とした大乗経典として、大乗仏教興隆の時代に成立した。もともと本経の前10巻にあたる大般泥洹経に相当する部分が原型に近く、紀元後300年頃までにカシミールのあたりで成立し、以降、付加増広がなされ、400年頃に本経原典の全体が成立したと思われる。
【内容】
40巻。本経の思想内容は大まかに次の3点に絞られる。
① 仏身常住。仏陀の身体の本質は常住であると主張する。
② 涅槃の常楽我淨。無常の世界を踏み超えた涅槃にこそ常の世界がある。その世界は同時に楽・我・浄の属性を持つ。淨を離れた常楽我もなく、楽を離れた常我淨もない。このような表現を離れた一理想境を涅槃というのである。そうすれば、大涅槃は仏の入滅を意味するのではなく、大我・如来の代名詞となる。この境地を常楽我淨と説き、これのあることを大涅槃といい、ないのを涅槃というとする。
③ 一切衆生悉有仏性(一闡提成仏)。本経の明かす甚深秘密の義はあらゆる衆生に仏になる可能性があるとする仏性の普遍性である。この思想によれば、まったく仏法に縁のあるはずもない極悪の一闡提であっても成仏することが可能となる。ただし、この思想は涅槃経の最も発展した形の思想であって、大般泥洹経や本経前半部では一闡提不成仏の立場をとり、後半において、成仏の思想が完成する。このことから、本経は幾つかの段階を経て成立したことがわかる。本経は全体で13章に分かれている。
【後世への影響】
インドで本経の研究は特に隆盛はしなかったが、中国の仏教界において衝撃的に影響を与え、さらに日本においても天台とともに日本人の思想に、仏性思想、本覚思想あるいは親鸞の思想などに多大な影響を与えた。
【関連経典】
この経典の作者は、ことに阿含経典(特に小乗涅槃経)を典拠にしてそれに相当の肉付けをし、さらに般若経類の影響を受けた上、さらに部派仏教の影響も多分に受けている。異訳に大般泥洹経、大般涅槃経後分がある。

大蔵経全解説大事典(1998年)より抜粋

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