人形装飾付異形注口土器
ひとがたそうしょくつきいけいちゅうこうどき
概要
注口土器(ちゅうこうどき)は、縄文時代には儀礼などで液体を注ぐために使われた器です。その中でも、この土器は非常にユニークな形をしています。くびの部分が二股にわかれ、ドーナツ形の胴部につながっています。かつては、胴部の一部が欠けて孔(あな)が開いているところに注ぎ口がついていました。
さらに珍しいのは、前後左右に1つずつ、全部で4つの顔がついていることです。そのうちの左右2つは全身像として表されています。それぞれの顔の表現に明確な違いはありませんが、このようにペアになった顔や人形(ひとがた)の装飾は、しばしば男性と女性を表します。子どもがたくさん生まれ子孫が繁栄することや自然の豊かな恵みを祈っているのでしょう。その独特な形だけでなく人形の装飾からも、当時の人々の強い思いを感じることができます。
縄文時代の土器は、抽象的な模様で飾られるのが一般的でした。その中で、このような人形の装飾がついた土器は、縄文時代中期の関東や中部地方、後期後半の北海道から関東地方に見られます。これは、土で作られた人形(にんぎょう)、土偶(どぐう)が盛んに作られ、その形が多様化していった時期でもあります。このような土器の出現の背景には、土偶の存在が大きく影響しているのでしょう。