太型蛤刃石斧
ふとがたはまぐりばせきふ
概要
弥生時代になると、朝鮮半島から稲作や畑作などの農耕が日本に伝わります。それと同時に、そのための農具や技術も伝わりました。ここで紹介するのは、木製の鋤(すき)や鍬(くわ)などの農具を製作するために使われた、三種類の石斧(せきふ)、つまり石の斧(おの)です。どれも、木などの柄(え)にくくりつけて使います。まず、樹木を伐採するのに使うのが、太型蛤刃石斧(ふとがたはまぐりばせきふ)です。蛤のようにぽってりとした形をしており、刃がぶ厚いのが特徴です。切り出した木材を加工するのが、柱状片刃石斧(ちゅうじょうかたばせきふ)。柄に縄でしっかりと固定するための、抉(えぐり)というくぼみがあるものもあります。厚い刃なので、大きな力をかけて振り下ろし、木材をあらく削るのに向いています。また、扁平片刃石斧(へんぺいかたばせきふ)は、刃の部分が薄いので、木材をより細かく薄く加工することができます。当時の人々はこれらの道具を使い分けて、木製の農具を作りました。弥生時代に先立つ縄文時代にも、土を掘ったり、樹木を伐採したりするための石斧はありました。しかし、それらは農耕のための道具を作るのには向いていませんでした。そのため稲作とともに、必要な木材の加工具が、朝鮮半島から導入されたのです。