袍裂 白地双鶴雲文様錦
ほうぎれ しろじそうかくくももんようにしき
概要
一見するとボロボロの裂(きれ)のように見えますが、それは、中国・遼時代(916~1125)のお墓から発掘されたためです。よくよく目を凝らしてみると、白地に雲や花、鶴が二羽ずつ並んで飛んでいる文様が見えてきます。描かれたような鶴の輪郭線や、青の濃淡による美しいグラデーションも、すべて織りであらわされており、高度な技術がうかがえます。このように細やかな文様を織り出すには、縦糸と横糸を二重にした複雑な組織に仕立てることが必要です。ボロボロになった裂の端を見ると、文様を織るための色糸が何層にも厚く重なり合い、たいそう重厚な織物であることがわかります。こうしたさまざまな色糸で地色と文様を織り表した織物を、「錦」(にしき)といいます。
ボタンを留めたと考えられる輪っかが付いており、左上には、2枚の裂を縫い合わせた縫い目もみられます。上等の錦ですから、かつては、貴族が着用する「袍」(ほう)という上衣だったのでしょう。アメリカのクリーブランド美術館には同じ文様を織った錦の裂があり、共通の墓から発掘された可能性があります。発掘された当初は衣服の形をしていたかもしれません。