抹茶碗
まっちゃわん
概要
「秋雨や しまひ忘れし 伊豫すだれ 章太郎」の句が書かれた抹茶碗。章太郎は若い頃から俳句を嗜んでおり、陶器に俳句を書き入れることも多かった。句集も複数出版している。大正期には二長町の市村座を中心に句楽会という歌舞伎役者や知識人、実業家などが集う文化的サークルがあり、章太郎は師匠の喜多村緑郎とともに参加していた。この縁で新進の劇作家である長田秀雄や、六代目尾上菊五郎と知り合った。
章太郎は「章魚」(蛸( たこ)の意)という俳名を用いたが、陶磁器類に俳句を書き入れる際は、俳名ではなく名前を入れることが多い。俳名の由来は章太郎につけられたニックネームで、若い頃、役者の青木千八郎と大阪の住吉大社を訪れた際、茶屋の軒先に綿細工のたこがぶら下がっていたが、これを見た青木が花柳によく似ていると言い出し、以来「たこ」とあだ名されるようになったという。
花柳章太郎(1894~1965)の旧蔵品で平成10年(1998)に遺族の青山久仁子氏より国立劇場へ寄贈された。