ラッパを持てる少年
概要
17
ラッパを持てる少年
Boy with a Toy Trumpet
1923年
油彩・麻布 94.3×63.2㎝
1921年から翌年にかけて、わずか半年にすぎなかったが、パリを中心とした外遊は、小出の画風の展開にとって大きな転機となった。その背後には、「西洋人の絵には何かしら動かせない処の重みと油絵具の必然性が備わり、絵画の組織が整頓せるために骨格がある如くである」(『油絵新技法』より)と後に記したように、日本では学びえなかった、ヨーロッパ絵画=油彩画の本質に対する深い認識があった。彼我の差を克服しつつ、日本人として自らの絵画を形成していこうとするなかで、以前の厚塗りで粘りのある描写は払拭(ふっしょく)され、要約されたフォルムと歯切れのよい筆致によって、近代的な感覚をもりこもうとするようになった。当時5歳になる愛息泰弘をモデルにしたこの作品でも、青と褐色の鮮やかな対比と簡潔な描写によって、あどけない対象の存在感と、ともすればバランスをくずしかねない画面構成のおもしろさが表現されている。