裸女と白布
概要
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裸女と白布
Nude on white cloth
1929(昭和4)年
油彩、麻布 52×64cm
oil on canvas
1930年 第4回全関西洋画展
小出の画風を画するものに、1921年から翌年にかけての渡欧体験があげられる。それまでの緊密な構図に支えられた重苦しいほどの色調と執拗なまでの筆致は、渡欧以後払拭され、ねばり強い描写にもかかわらず、平塗りの大胆な筆遣いと薄塗りのために画面は軽妙なものとなった。こうした変化の背後には、滞欧中に得た芸術をはじめとする西欧と日本との差異に対する深い認識と、洋画家として模倣に終始するのではなく、あえてその断層を克服しようとする強い意志があった。そして小出自身の美意識や嗜好にもとづいて見いだしたものの一つが、日本の裸婦の美であった。小出は、「日本人の黄色に淡い紅色や淡い緑が交つてゐるのも私は白色人のもつ単調な蛾の様な不気味さよりも、もつと異常のあたたか味と肉臭をさへ、私は感じる事が出来ると思ふ」(「裸婦漫談」)と述べ、さらに日本人特有の胴長のプロポーションについても、理想化を求める西欧美術の底流にある美意識とは異なって、ありのままの姿を是認している。〈裸女と白布〉は、その美意識を表現することに成功した〈裸女結髪〉(1926年)から〈支那寝台の裸婦〉(1929年)までの一連の裸婦像のなかの1点である。横たわる裸婦の弾力のあるつややかな肌色は、シーツの白さとの鮮やかな響き合いによってひきたち、フォルムはおおまかな筆致ながら的碓にとらえられている。