大立洞窟
おおだちどうくつ
概要
本洞窟は、蔵王連峰の西山麓、米沢盆地の東北隅に位置する丘陵中にあり、第三紀凝灰岩からなる山体の風化によって形成されたものである。この丘陵には同様な洞窟やきりたった凝灰岩露頭が多くみられ、神秘的な景観のためにしばしば山岳信仰の対象とされ、また繩文時代以降、古代・中世の遺物の散布するところも少なくない。
本洞窟は南に開口し、間口13メートル、奥行7メートルの規模を有する。前面のテラスには巨大な凝灰岩の落下がみとめられる。本洞窟の発掘調査は昭和49年から52年まで山形県立博物館・山形県教育委員会によって実施され、51年には繩文時代前期の包含層が確認され、52・53年には洞前面のテラス部分から土器としては最古の部類に属する隆起線文土器・爪形文土器及びそれに伴う尖頭器が発見されている。また、隆起線文土器出土層の堆積土を分析した結果、カラマツ属の花粉の含まれることが確認され、現在よりやや冷涼な気候の植生が付近にひろがっていたことも知られた。
本洞窟の属する丘陵地域には日向洞窟・一ノ沢洞窟など、最古の土器群を出土する洞窟がすでに数か所知られているが、全国でも数少ないこの時期の洞窟集中地域であり、居住者の移動あるいは集団間のつながりかたなどを理解する上で好条件をそなえたものと考えられるので、本洞窟を指定し、系統的な保存をはかることとする。