大清水上遺跡
おおすずかみいせき
概要
岩手県の南西部に位置する大清水上遺跡は、一辺20kmの日本最大級扇状地である「胆沢扇状地」の最奥頂部、標高280mの中位段丘上に立地する。
胆沢ダム建設事業に伴い当該地の発掘調査が平成12年度に開始されたが、中央広場を有する環状集落であることが判明したため、集落のほぼ全体は計画変更により保存された。
遺跡は縄文時代前期後葉の大木5式期に限られ、遺構がまったく存在しない直径約20mの中央広場を取り囲むように、大型竪穴住居62棟がその長軸を中央広場の中心部へ向けて円環状に直径約110mの範囲で配置され、さらにその外側には小型竪穴住居や主に貯蔵穴と想定される土坑が巡る。
縄文時代の環状集落の萌芽は縄文時代前期中葉の史跡綾織新田遺跡(岩手県遠野市・大木3〜4式)や史跡根古谷台遺跡(栃木県宇都宮市・黒浜式)に見られるが、それらはいまだ中央広場に大型竪穴住居の長軸を向けない構造になる。これに対し、時期的にも後出する大清水上遺跡は、中央広場に軸線を向けて環状を形成する集落で、縄文時代中期に普遍化する環状集落の初期形態として、その形成状況がわかる極めて重要な遺跡である。