経帙
きょうちつ
概要
神護寺経は後白河法皇が鳥羽法皇勅願の意志を継いで文治元年(1185)に完成させた紺紙金字一切経で、本品は神護寺経を約10巻ずつ巻いていた経帙である。墨染めの竹ひごを段々(だんだら)文様に染めた10本あまりの色糸ですのこ編みし、紅地唐花襷文の錦で周囲を縁どりしている。芯には紙を入れ、竹のすのことの間に一面に雲母(きら)を敷きつめている。紐は平組で襷文。帙の二隅と紐に蝶形の金銅打出金具が留められている。制作の事情が明らかであり、平安後期の贅を凝らした経帙の作例として誠に貴重である。現在、神護寺には経典2317巻、経帙202枚、経櫃45合が伝存しており、重要文化財に指定されている。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.285, no.35.