紙本著色雪村自画像
概要
月夜の雪峰を背景にした特殊な肖像画で、雪村自ら詩を題している。自題の書風、画風とも老境を示しており、制作は雪村晩年の三春【みはる】時代と思われる。王子猷訪戴の故事に因む詩を題した意は、月光に照らし出された雪山の風景に対する感興と王子猷の感興とを交交に響かせ、自らの心境を吐露するところにあったと解され、像主は雪村その人と認められる。画家の自画像には、雪舟が弟子の宗渕と秋月に描き与えた先例があるが、前者はすでに失われ、後者も模本で伝わるに過ぎない。本図は室町時代の大画家の個性豊かな自画像として貴重である。