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大宮踊

おおみやおどり

概要

大宮踊

おおみやおどり

無形民俗文化財 / 中国・四国

選定年月日:19711111
保護団体名:大宮踊保存会

記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財

 これは、岡山県県北の蒜山【ひるぜん】高原山麓の村々(この一帯を山中【さんちゆう】ともいう)で踊られてきた盆踊である。八月の盆の期間、日を替えて各所の神社・寺・辻堂などにてそれぞれの地の老若男女によって踊られている。大宮様と呼称される八束村の福田神社での踊りが最も盛大なので、この盆踊を大宮踊と呼んでいる。鳥取県の大山【だいせん】の裏側にあたる盆地状の地形の当盆踊伝承地域は、近年まで陸の孤島などといわれて交通の便がよくなく、それだけに民俗の古風をよく伝え残してきたところである。
 大宮踊が今日踊られている主な場所と期日は、神宿堂【じんじゆくどう】・道目木堂【どうめきどう】(八月十三日)、川上小学校校庭・吉森堂(同十四日)、福田神社(同十五日と十七日)、高福寺(同十六日)、長田神社(同十九日)などである。これら踊り場の多くは板張り床のある屋内で、中央上方に長四角形の大灯籠(その下方に、和紙にさまざまな絵を切り抜いたシリゲと称するものが垂らされている)を吊るし、その下に踊り子が輪を作り、輪の中に音頭取り数名と太鼓叩き(縄をより合わせたバチで太鼓をドロン、ドロンと打つ)が位置する。踊り手は、音頭(歌)のゆるやかなテンポに合わせて、下駄で床を踏みつつ悠長に踊るが、その振りは、腰を中心に、肩・首・手首・目つき等々全身の動きに細やかに心を配りながらの大変美しい型となっている。言い伝えによれば、上方の役者が大山詣【まいり】の途次立ち寄り教えた振りが一部取り入れられたといわれる。音頭の種類には、「あおい」「しっし」の二曲があり、踊りの手には、「あおい」「しっし」「まねき」の三種がある(なお、「まねき」の踊りの音頭には「あおい」を使う)。踊りが終わりに近づくと、テンコと呼ばれる、仮装した数名(編み笠に杵を手にした者、茣蓙【ござ】を背負い念仏鉦を手にした者、二つに折ったキュウリを手にした者、ドジョウすくいの所作をする者、擂粉木【すりこぎ】を手にした者、妊婦姿で擂鉢【すりばち】を手にした者)が登場し、観客の目を奪う。ことに擂粉木持ちと擂鉢持ちとの男女和合を模した所作が人びとの目を引き、こういった子孫繁栄を願っての気風が踊り全体の背景に秘められている。たとえば、音頭「あおい」に「しのぶには ウワハン どてらぬこがよかろ ウワハンヨウ 菊の下葉に夜を明かす」といったような男女間の交情を暗示する歌詞が多い。かつてこの踊りのときには、歌垣【うたがき】風のこと(自由恋愛の風)が盛んだったとのことである。
 このように大宮踊は、盆踊が今日の姿に至るまでの変遷の過程を示す重要な要素をよくとどめており、また地域的特色も大いに顕著である。

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キーワード

/ 踊り / 踊る / 音頭

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