《昔語り》の僧侶
概要
《昔語り》の画想は1893年夏にフランスから帰国した黒田が同年秋に訪れた京都で、清閑寺の住職恩順から寺の由来を聞いた時に得られた。恩順は《昔語り》の画中に、笛を吹く仕草をして話す僧侶として登場する。画想を得た時を回想した画家の「何時か話をする所を拵えてみやうと思った」という言葉や《昔語り》のためのスケッチなどから、僧の話を聞く人々という構図は当初から決まっていたらしい。本図は《昔語り》の制作が具体的に始められる1896年の前年の年記を持ち、《昔語り》下図としてではなく、恩順その人への興味から制作されたと考えられる。