石室善玖墨蹟 寒山詩
せきしつぜんきゅうぼくせき かんざんし
概要
唐の散聖のひとり寒山の五言律詩を記したものである。筆者石室善玖は、25歳で入元して諸尊宿に参じ、ついに金剛幢下に入って茂古林の法を嗣いだ。8年ののち帰国、京・鎌倉の諸大寺の主となり、備後の康徳寺や武蔵の平林寺(もと岩槻、いま野火止にある)を開いた。康応元年(1389)に96歳の長寿を得て円寂。
その書風はのちの王鐸(1592〜1652)に似て晋唐に近く、師古林清茂のそれに雅致を加えたものといえようか。代表的な遺墨は、法兄月林道皎十三回忌に際しての拈香語や、そのとき後光巌院より賜った勅額に対する祝祷語(貞治2年・1363)であろう。いずれも威風堂々たる大墨跡である。
本幅はそれらに比して、内容的には軽いものであるが、かえってそのためか、師の枯淡な風格が全紙に溢れている。
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