菩薩立像
ぼさつりゅうぞう
概要
大ぶりの髻(もとどり)を結い、腰を左にひねって立つ菩薩像。頭が小さく腰の位置が高めのプロポーションや、肩幅を広く造り腰で十分に絞った抑揚のある肉取りは、奈良時代後期の木心乾漆造の作例と通ずるところがあり、本像もその頃の制作とみられる。肉付けは柔軟で立体感に富み、裳の衣褶(いしゅう)も重たくならず自然に脚部を覆い、裳裾左右を斜め上へ折り畳みながら処理するなど、小像ながらも充実した造形が随所に看取される。
胸飾りや臂釧(ひせん)、体部から遊離した天衣(てんね)、台座まで含めて一鋳とし、内部は中空とする。両手先は別鋳して取り付けていたものと考えられるが、今失われている。全面に厚手の鍍金を施すが、土中による腐蝕のため、面相など細部の表現が失われているのが惜しまれる。加賀白山出土と伝える。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.293, no.73.