霧
きり
概要
画面左下に署名:S.MigiSHi
裏面に画題・署名・年記・場所:霧 三岸節子 昭和38(ママ)年二月 南佛カーニュにて
出品:花とヴェネチア展(1974)
様々な色を塗り重ねることによってもたらされたグレーの微妙な色調の変化の中に、霧にかすんだヴェネチアの街と空、そして運河が描かれ、アーチ型の赤茶色の橋とゴンドラの黒い線がアクセントとなっている。霧に包まれたヴェネチアは、いつにも増して叙情的で魅力的な街に映ったことであろう。「不思議とこの水上からの角度が、水の上の街を見るのに最高の角度であることを発見した。観光シーズンでない冬、暇をもて余している船頭にはよい客だったであろう。あっちへ行け、こっちに行ってくれと、こちらの要求に応じてゆっくりと船を進ませてくれた。」(『旅へのいざない』) 手前に見えているのは作者が乗っているゴンドラの舳先であろう。ゴンドラに揺られながらスケッチを重ね、アトリエでさらに試行錯誤を繰り返して豊かな油彩画が生み出されていった。
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一宮市三岸節子記念美術館