蘇言機(錫箔蓄音機)〈/英国製〉
そごんき(すずはくちくおんき)〈/えいこくせい〉
概要
蘇言機(錫箔蓄音機)〈/英国製〉
そごんき(すずはくちくおんき)〈/えいこくせい〉
歴史資料/書跡・典籍/古文書 / 関東 / 茨城県
茨城県
欧米 19世紀
1台
茨城県つくば市天久保4-1-1
重文指定年月日:20040608
国宝指定年月日:
登録年月日:
独立行政法人国立科学博物館
国宝・重要文化財(美術品)
本機は、わが国に初めて伝来した録音機である。製作は英国の工学者、物理学者で日本における地震計の設計者ユーイング(James Alfred Ewing一八五五~一九三五)の手になる。ユーイングは一八七七年のエジソンの蓄音機の発明を聞き及び、「J.MILNE&SON MAKERS EDINB.」の銘板からもわかるように英国エジンバラにおいて製作した。明治十一年(一八七八)九月には東京大学に招聘され、本機をもたらした。そして同年十一月十六日、一橋にあった東京大学理学部の実験室において録音・再生の実演を行った。さらに翌十二年三月二十八日、築地の東京商法会議所で、四月十二日には浅草の料亭・井生村楼【いぶむらろう】で公開実演を行った。商法会議所での実演時には東京日日新聞社社長の福地桜痴【ふくちおうち】(源一郎、一八四一~一九〇六)が「コンナ機械ガデキルト新聞屋ハ困ル」と吹き込み、再生されたという逸話が残っている。
本機の構造、特徴および使用方法は次のとおりである。まず、ねじを切った鉄棒にスパイラル状に溝がある金属製の円筒を取り付け、右手のハンドルを手で回転させることにより、円筒をスパイラルに回転させる。円筒の表面には錫箔を巻き、それと接するように金属の振動板の前に金属の刃を取り付けたもの(マイクロホンおよびスピーカーの役割を果たす)を置く。そして円筒を回転させながら話すことにより、錫箔表面を刃が刻み録音される。円筒を元の位置に戻し、同様に回転させると喋ったことが再生される。
録音機の発達はその後、一八八九年のエジソンによる蝋管式蓄音機の発明によってようやく一般に普及していくことになるが、本機の登場はそれに先立つ先駆的作品として記憶されるものである。
附とした木箱は本機の収納箱で、ともに「東京大学理学部」の焼印があり、伝来を明らかにしている。
戦前の登録台帳が焼失していることから、国立科学博物館の所有となった時期は明らかではないが、本機は、エジソンの実験に遅れること一〇か月にして、日本初であると同時に世界で二番目に実演・実験に成功した録音機として、わが国の録音工業史・レコード文化史上に貴重である。