皇帝マクシミリアンの凱旋
こうていまくしみりあんのがいせん
概要
皇帝マクシミリアンの凱旋
こうていまくしみりあんのがいせん
神聖ローマ帝国の皇帝マクシミリアン1世(1459ー1519)の事蹟と威光を称揚させるために描かれた「凱旋」行列の中心をなす大凱旋車の図。歴史上、「最後の騎士」と称される皇帝マクシミリアン1世は、1512年のニュルンベルクへの行幸以降、デューラーに命じて自らの事蹟と威光を称揚させるためにこの「凱旋」のシリーズを制作させた。「凱旋行列」の基本的な理念は、無敵を誇ったローマ将軍の凱旋入城の先例に遡るもの。この凱旋シリーズの連作は、古代の実際の凱旋行列に代わるものであり、多数の芸術家がこの制作に関わった。ドイツ最大の画家と称される作者デューラーは、皇帝マクシミリアンのために1000点を越える木版画を制作しているが、この「凱旋」の連作は中でも特筆すべきシリーズである。本シリーズは10平方メートルを越える「凱旋門」と「凱旋行列」から構成されているが、中でも中心部分が本作、すなわち長さ2.5メートルに及ぶ皇帝マクシミリアンが乗る大凱旋車である。古代の実際の凱旋に代わって木版画による紙上の「凱旋」を表現した特筆すべき作品。マクシミリアンは皇帝の礼服姿で馬車の玉座に掛けており、彼の2人の夫人と太子フィリップと皇女マルガレーテほか皇族が座っている。この大凱旋車の御者は「理性」であり、4つの車輪はそれぞれ、「品位(DIGNITAS)」「栄光(GLORIA)」「卓越(MAGNIFICENTIA)」「名誉(HONOR)」を象徴している。各葉に記された銘文は、皇帝の徳を称え、皇帝の勝利の意義と根拠が説明されている。デューラーの水彩による下絵素描は1518年までに制作されており(アルベルティーナ素描版画館蔵)、本版画はその下絵をもとに1609年に刷られたものである。
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