麗子微笑〈岸田劉生筆 一九二一年/油絵 麻布〉
概要
「切通しの写生」は、道路と土手と塀との簡単な画面構成ではあるが、そのねっとりした描写は劉生(一八九一~一九二九)が外光派・印象派的な作風から脱し、北欧ルネサンスの画風を追求して独自の細密な写実主義と精神表現による画境にいたったことを示す記念すべき傑作である。第二回草土社展出品。一九一五年(大正四)。
その後劉生は独自の画境にあって麗子像、於松像などの連作を発表し、最晩年には宋元画、浮世絵など東洋の独特の美を追求した。
「麗子微笑」は、麗子シリーズのうち満七才像で、その髪型と笑みと手に青菓をとる姿は、どこかエジプト絵画を思わせるものがあり、またそれが劉生独自の造型美に一役買っており成功している。「二人麗子飾髪図」(一九二二)「麗子住吉詣之立像」(一九二二)などとともに代表作にあげられる。第二回流逸荘個展出品。一九二一年(大正十)。