雑筆集
ざっぴつしゅう
概要
平安時代後期の仏会、特に密教系の法会に用いられた表白類を類聚したもの。巻分けは、仏陀、灌頂歎徳、講肆、諸表白、表白等の5巻になっている。
収められた約200の表白類のうち、年代の最も遡るのは康和元年(1099)6月21日に法勝寺でおこなわれた普賢延命御修法表白で、下限は仁平2年(1152)の問講表白と胎蔵行法表白である。東寺の法会に関する表白類が多いことから、おそらくは平安時代後期に東寺の周辺で編録されたものと考えられている。灌頂歎徳や諸表白の巻には教化も含まれており、初期歌謡を考える上で注目される。
奥書はなく、各巻ともに別筆であるが、書風からみて鎌倉時代中期の写本と思われ、それぞれの巻首に捺された「方便智院」の朱方印によって、高山寺に伝来していたことが知られる。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.307, no.134.