墓誌断片(奈良県行基墓出土)
ぼしだんぺん(ならけんぎょうきぼしゅつど)
概要
奈良時代の高僧、行基の火葬墓から出土した銅鋳製の墓誌断片で、残画を含め4行21字が残る。奈良・唐招提寺に伝わる『竹林寺略記』によると、行基墓は文暦2年(1235)に発掘され、八角石筒の中に銀筒を納め、その中に「行基菩薩遺身舎利之瓶」の銀札を付した銀製舎利瓶が奉安されていたという。銀筒には20文字詰17行、309字からなる「大僧正舎利瓶記」が刻まれていた。それによると、行基は天平21年(749)に右京の菅原寺(喜光寺)で死去、生駒山東麓で火葬され、竹林寺(生駒市有里)の境内に葬られるが、この墓誌の残欠はその一部と認められる。形式の整った中国風の墓誌銘の遺例として貴重である。
なお、行基墓は文暦2年に発掘されたのち、埋め戻されているので、現在の遺品はその後に再び掘り出されたものである。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.282, no.19.