種子島南種子の座敷舞
たねがしまみなみたねのざしきまい
概要
種子島の南端の南種子町では結婚式や新築祝、その他の祝の席で種々の舞が行われてきている。これらは、その席の皆が手拍子を打ってはやすなかで、なかの一人が歌いつつ即興的に演じるもので、歌詞は地元の種子島の言葉をふんだんに含み、特に擬態語にその特色がある。
祝宴では、まず「めでた節」とよばれる歌を全員で歌い、その後に舞が披露されていく慣いであった。踊り手は、はじめに入り口付近に控えて一座に向かって一礼し、中央に出て舞う。歌によって座敷箒や手拭など身近なものを小道具に使い、一応の舞振りは決まっているが、主題に応じて、それぞれの舞い手の工夫が加えられる。周囲の者が歌う「何々舞はみいさいな。何々舞はみいさいな」というハヤシと舞い手自身の歌との掛け合いで進行する。
演目は「鳥刺【とりさ】し舞」「蟹舞」「婆【ば】じょう舞」「味噌すり舞」「仏舞」「バックー舞(ひきがえるの舞)」などで、このうち動物の形態を主題とする「蟹舞」や「バックー舞」は他には類例がないものとされる。
また、この地域では、小正月に「蚕舞」とよばれる芸能が行われる。これは一月十四日と十五日の夜に、「嫁ジョー」あるいは「コノミヤジョウ」とよばれる晴着で女装した青年と道化役の青年、お礼の鏡餅をいれる「カンザー」とよばれる籠を持った者を中心に地区の青年たちが家々をめぐり、各家の座敷で祝福の舞を披露していくもので、養蚕の成功や豊作を祈願する舞である。
以上の舞は、いずれも芸能の変遷の過程を示し、地域的特色を持つ重要なものである。
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