陸中沿岸地方の神子舞
りくちゅうえんがんちほうのみこまい
概要
岩手県の陸中沿岸地方には神子【みこ】と記される巫女がおり、オシラサマ遊ばせ、春祈祷、神社祭礼での湯立【ゆたて】託宣、病人祈祷、憑きものおとし、葬式後のあと清【きよ】めの祓いなどを執り行い、当地方の人々の種々の信仰生活に深く関わってきた。当神子の何よりもの特徴は、宮古市山口の黒森神社など神社の祭礼時での湯立託宣、あるいは師匠について修行が終わりオダイジという秘伝をいただく時に神子舞を舞う点である。これを舞う時には必ず神楽衆(黒森神楽)を招く。神楽衆の太鼓、笛、手平鉦の囃子が奏され、神子と神楽衆が歌を掛け合い、託宣の時には太鼓の打ち手胴取【どうと】りと問答する。神子舞には「笹の舞」、「水神の舞」などがあり、舞の足取りには反閇【へんばい】風のものが入っている。
このように類例の少ない貴重な伝承をもつ陸中沿岸地方の神子も今日では急速に姿を消しており、一〇名足らずとなっている。ことに神子舞を舞える者は数えるほどしかいなくなった。当伝承は芸能の成立または発生を示すものとして重要な民俗芸能である。
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