金銅宝珠杵
こんどうほうじゅしょ
概要
宝珠杵(ほうじゅしょ)は五宝珠(ごほうじゅ)を表した例が一般的であるが、本品は単体の宝珠を用いた異色の宝珠杵。火焔(かえん)を欠失していることもあるが、全体的に小ぶりな作品である。鬼目(きもく)は小さく委縮した感じで、蓮弁帯も彫りが浅く立体感に乏しい。把(つか)の両端に火焔の座となる円板を作り、円板に4個の孔を開け、ここに火焔の下部を挿入していたと思われる。宝珠は頂上がやや尖り、三重の圈線を陰刻している。宝珠杵や宝珠鈴において火焔を別作とする例は平安時代から鎌倉時代にかけて見られ、古様な要素と言うことができよう。単体宝珠の宝珠杵の類例が稀であるため、製作時期については慎重さが必要であるが、やや形式化した把の表現から南北朝時代としておきたい。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.40, no.22.