星ヶ塔黒曜石原産地遺跡
ほしがとうこくようせきげんさんちいせき
概要
星ヶ塔黒曜石原産地遺跡は,霧ケ峰山塊北西部に位置する星ヶ塔山の東斜面に広がる。大正9年(1920)の鳥居龍蔵(とりいりゅうぞう)の調査により,黒曜石原産地遺跡であることが明らかにされ,昭和34年(1959)から同36年の藤森栄一による調査により縄文時代の採掘跡であることが明らかになった。平成9年(1997)から同25年にかけて,下諏訪町教育委員会により,発掘調査等が実施され,約3万5千㎡の範囲に縄文時代の黒曜石採掘跡が193か所分布していることが明らかになった。縄文時代前期には,鹿角(ろっかく)等と想定されるピック状の道具で,流紋岩(りゅうもんがん)を掘り崩して黒曜石原石を採掘し,原石の状態で持ち出されたことが明らかになった。縄文時代晩期には,地下の黒曜石岩脈を敲石(たたきいし)で採掘し,剥片剥離(はくへんはくり)を行って,石核や剥片の状態で持ち出したことが明らかになった。このように,各時期の採掘方法と石材の搬出状態が明らかにされ,原産地遺跡と消費遺跡を結び付る成果が得られた。星ヶ塔黒曜石原産地遺跡に産出する黒曜石は,自然科学的な手法による産地推定分析により,関東,中部を中心に,東北から東海地方までという極めて広域に供給されたことが明らかにされている。星ヶ塔黒曜石原産地遺跡は,縄文時代の交流の実態や社会の構造を考える上で欠くことができない重要な遺跡である。