次郎左衛門雛
じろうざえもんびな
概要
次郎左衛門雛とは、江戸時代中期に雛屋次郎左衛門という人形師が創始したことからこの名があり、団子のような丸顔に引目鉤鼻という、源氏物語絵巻に描かれるような面貌が特徴的である。雛の本流として、流行に左右されず公家や大名家に好まれたという。
鍋島家には3対の次郎左衛門雛が伝来するが、そのうち2対は11代鍋島直大(なおひろ)・栄子(ながこ)夫妻により明治40年に誂えられたもので、残る1対がこの人形である。これは昭和6年に朝香宮家から降嫁した13代直泰(なおやす)夫人紀久子所用の人形で、背中に付けられた紙縒の墨書により、男雛は紀久子夫人、女雛は父親である朝香宮鳩彦王(やすひこおう)(1887-1981)の持ち物であったことが分かる。女雛の方が衣裳や頭髪がどことなく年代を経ているように見えるのも、所用者が一世代違うためである。かつては男性も雛人形を所持していた、そして親から子へ受け継がれていたことが分かる好例といえるであろう。