成相寺旧境内
なりあいじきゅうけいだい
概要
特別名勝天橋立を見下ろす成相山(なりあいさん)の中腹に位置する奈良時代に創建されたと考えられる山林寺院。『今昔物語集』,『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』など多くの史料に記録がみえ,平安時代には山岳霊場として全国に知られる存在となり,その法灯を現在に伝える。また,雪舟(せっしゅう)「天橋立図」(国宝)や「成相寺参詣曼荼羅」には中世の成相寺の様子が描かれており,応保元年(1161)には後の天台座主(ざす)覚忠(かくちゅう)が,貞和4年(1348)には本願寺の覚如(かくにょ)が訪れるなど,丹後の名刹として,信仰を集めた。
山頂付近では奈良時代の遺物が出土するとともに,平安時代から室町時代の成相寺の中心建物の可能性がある遺構が良好な状態で検出されている。また,それを中心に広い範囲で中世墓が展開することが確認され,現在の場所に伽藍(がらん)が造られる以前は,山頂付近に伽藍が存在したことが判明した。
平安時代以降の日本を代表する山岳霊場であり,旧境内に伴う建物や中世墓群が良好な状態で保存されているなど,古代から中世にかけての山林寺院の空間利用や展開を知る上で重要である。