色絵婦女逍遥文皿
いろえふじょしょうようもんさら
概要
色絵婦女逍遥文皿
いろえふじょしょうようもんさら
清時代/18世紀後期
磁器
高2.3 径23.4
1枚
来歴:1984神戸市立博物館
参考文献:
・神戸市立博物館『神戸市立博物館所蔵 阿蘭陀絵伊万里とびいどろ・ぎやまん展―江戸のオランダ趣味―』(福山市立福山城博物館、1998)
オランダ東インド会社からの依頼により作成したコルネリス・プロンク(Cornelis Pronk/1691-1759)の下絵「The Parasol Ladies(婦女逍遥、傘持ち美人)」に基づく中国・景徳鎮窯の色絵磁器。プロンクは18世紀に活躍したオランダの画家で、東インド会社の依頼により1734年に「The Parasol Ladies」を含む4点の下絵を作成したとされます。これらの発注原画のうち、3点はオランダ・アムステルダム国立博物館に所蔵されています。
平皿の見込み部分には、画面右側に二人の中国婦人図が配され、一人は画面左側の鳥に向かって手を差し伸べる貴婦人、もう一人は傘を高く掲げる侍女が描かれています。画面左手に顔の赤いものや、首元に襟巻のあるものなどの特徴を持つ4羽の鳥が配されています。見込みの周囲には8つの薔薇を配し、それぞれの間には赤や黄色の花卉文を添えられています。プロンクは中国婦人図を描くにあたり、ファン・リンス・ホーテン『東方案内記』(オランダ、1595年刊行)から着想を得たとことが指摘されています。裏面の縁付近には、蝶や飛蝗と思われる昆虫を確認できます。
この原画を用いた磁器は、原画作成後間もない1736年に景徳鎮に発注され、その人気が大きかったために、再度1770~75年頃に発注されました。
色絵皿をみると、プロンクの原画に基づき、赤絵、染付、金彩を用いて絵付けを施しています。概ね構図や描き込まれる事物は、染付皿のデザインと同じですが、オランダ・アムステルダム国立博物館に所蔵される赤、青、緑、黄などの色釉を用いた平皿と比較すると、色釉の少なさに加え、丸みを帯びた人物の描写、人物の衣服に陰影表現が簡略化されている点に気づかされます。鳥の描写も線描のみとなっており、稚拙な描写が顕著といえます。裏面の縁付近には、染付で蝶や飛蝗などの昆虫文が配され、高台畳付は無釉です。原画との差異をみても、二度目の発注時に製作されたものなのでしょう。
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