一行書「直透萬重関」
いちぎょうしょ じかにばんちょうのかんをとおる
概要
安土桃山から江戸時代初期の禅僧、沢庵宗彭(たくあんそうほう)の書です。沢庵宗彭は臨済宗大徳寺派の僧侶で、「紫衣事件(しえじけん)」で知られる、硬派な人物でした。紫衣とは、天皇から徳の高い僧侶におくられる紫色の僧衣です。後水尾天皇(ごみずのおてんのう)が大徳寺などの僧侶に紫衣の着用を許可したことに、幕府が介入して大きな政治問題となりました。沢庵をはじめとする数人の僧侶は、これに対する激しい抗議書を幕府に提出し、結局流罪(るざい)になりました。
書かれているのは、「直透萬重関」(じかにばんちょうのかんをとおる)。臨済録(りんざいろく)におさめられた教えで、いくつも重なった厳しい難関を乗り越え、打ち破るほどに深く大きな悟りをひらかなくてはいけない、という内容です。書かれている言葉の強さを知ってみると、筆の力強さと内容がよくマッチしている気がします。