木造伎楽面・崑崙(社伝抜頭)
もくぞうぎがくめん・こんろん(しゃでんばとう)
概要
社伝では抜頭、すなわち舞楽面の一種とされるが、大型の仮面であり、頭部をすっぽり覆う形状から、舞楽面ではなく伎楽面と見るべきであろう。
面種については、獣耳及び牙を表す点から、崑崙である可能性が考えられる。ただし本面と表情の似る面は、わずかにアメリカ・フィラデルフィア美術館所蔵のものがあげられる程度で他には見いだしがたく、一方で東大寺や正倉院に伝存する複数の崑崙面とはかなり異なった印象がある。とくに本面では頭髪を棕櫚(しゅろ)の植毛によって表し、撥(は)ねるように強く立ち上がる髪の毛の印象は、かなり強烈なものであったと思われる。また本面が他と似ないという点についても、東大寺・正倉院の崑崙面も近い時期の制作でありながら互いに異なった個性を示していることから、伎楽面とくに崑崙面においてはバリエーションが豊富であったと見るべきであろう。