普賢十羅刹女像
ふげんじゅうらせつにょぞう
概要
慈悲を司る白い象に乗った普賢菩薩の左右に女性が5人ずつ描かれています。この10人の女性は十羅刹女(らせつにょ)。羅刹とはもともと人を食らう鬼神だったのが、仏の説法に接して法華経を信仰する人々を守る神になったとされています。十羅刹女は鬼神であるため鬼の姿であったり、中国風に描かれることが多いのですが、この絵では十二単をまとった女房装束で描かれています。法華経以外の経典では、女性は男性に生まれ変わってからでないと成仏できないとされてきました。しかし、法華経では女性でもその身のまま成仏できるという「女人成仏(にょにんじょうぶつ)」を説いていることから、宮廷女性の間で法華経信仰が広がり、それと関係してこの仏画が作られたと考えられます。
仏画でありながらも朱や緑、青を主体とした明るい色を用いて女房装束姿の十羅刹女を描き出すことで、華やかな大和(やまと)絵風に仕上がっています。また普賢菩薩も人間味ある姿で描かれ、優美な顔だちは女性的にも見えます。
法華経信仰と女性との関連性がうかがえる作品です。