紅白芙蓉図
概要
芙蓉(ふよう)は、華やかに栄えるという、めでたい意味を持つ花として古くから愛されてきました。芙蓉の中には、朝、白い花を開き、時とともに少しずつ紅くなるという種類があり、まるで、酒に酔ったようであることから「酔芙蓉」(すいふよう)ともいわれています。この作品はその酔芙蓉を描いたもので、白芙蓉は朝の姿、紅芙蓉は昼前後の姿をうつしています。二図の間で朝から夕方への時の経過が感じられるのに加え、一図の中でも、蕾(つぼみ)からそれがほころび、満開を迎えるまでの花の一生が展開しています。
李迪(りてき)は南宋時代の宮廷画家で、西暦1197年にあたる制作年が記されたこの作品は、李迪の代表作として有名です。花びらは、やわらかく淡い色合いのグラデーションを付け、葉っぱは、ややかたく強い墨線を用いて輪郭を象(かたど)っています。植物の質感を丁寧に再現しようという、画家の優れた技術力が感じられるでしょう。
日本には室町時代15世紀には伝来しており、現在まで大切に伝えられてきた、中国宮廷花鳥画の名品です。