太刀(小龍景光)
たち(こりゅうかげみつ)
概要
日本の刀剣で、刃がついておらず、ひと回り細くなって握るところを「茎(なかご)」といいます。保管するときは、茎を柄(つか)にはめ、鞘(さや)に納めます。この太刀は、茎の上の方に、剣に巻き付いた龍、同じ場所の反対側には古代インドの文字である梵字(ぼんじ)が立体的に彫刻されています。この龍は倶利伽羅龍王(くりからりゅうおう)という不動明王(ふどうみょうおう)の化身で、梵字もこの明王を文字であらわしたものです。不動明王は仏教で信仰されたホトケで、人々から困りごとを焼き払ってくれると信じられ、日本の刀剣では彫刻でさかんにあらわされました。この太刀は、所有者から所有者へ伝えられるなかで寸法を短くしたため、外装としての柄に嵌めると龍は完全に見えず、小さく見えることになります。これに因んで「小龍景光」と呼ばれています。
作者の長船景光は、14世紀前半に岡山県東南部で栄えた長船派の名工で、この太刀はその代表作として著名です。木材の年輪を思わせる地鉄(じがね)という肌模様は非常に緻密で、黒く見える部分と白い刃の間で輝く刃文(はもん)は、直線的で緊張感があります。刃文のなかに半円形で片方が角ばったものが見られますが、これは景光やその弟子などの作品でよく見られます。