秋冬山水図屏風
しゅうとうさんすいずびょうぶ
概要
6枚のパネルがつながった屏風が、2つでセットになった作品です。右から左に、秋と冬の景色が描かれています。
向かって右側の屏風には、川辺の木々の中に小さな庵が見えます。左側では、こんもりと雪の積もった景色の中、水辺に舟を浮かべ釣りをする人物、そしてお供を一人従え、驢馬(ろば)で山道を行く人物が、どちらも中国風のいでたちで描かれています。秋と冬の景色を墨で描く「秋冬山水図」という画題は、中国から伝わり、日本では室町時代以降、大変よく好まれました。描かれているのは実在する場所ではなく、人々の心の中にだけある理想の景色。描かれる人物も、単なる村人ではありません。俗世を離れつつましく隠棲する高士、つまり理想の生活に入った人たちです。
作者の円山応挙は江戸時代中期に京都で活躍した画家で、見えたとおりに写実的に描くことを心がけました。人物などは中国ふうであるにもかかわらず、私たちにもどこか見覚えのある日本の風景のような実在感があるのはそのためです。ここで応挙は、中国絵画の伝統的なテーマである理想的な風景と、現実の日本の風景を違和感なく組み合わせることに成功しています。