雪景山水図軸
せっけいさんすいずじく
概要
梁楷(りょうかい)は中国南宋時代の宮廷画家で、丁寧で細かな描写と、激しく荒々しい描写と、それぞれに巧みであったといいます。中央の「出山釈迦図」は山奥での修行をへて下りてきた釈迦を描き、左の「雪景山水図」は雪の降り積もる山中を行く旅人の一団を描きます。梁楷の弟子の作品と考えられる右の「雪景山水図」を含め、三点はもとは別々に制作されました。しかし日本に伝来した後、14世紀から16世紀に室町幕府を治めた足利将軍家に収蔵されると、三点一組として鑑賞されるようになりました。
各画面には、梁楷の対照的な二つの描き方が見られます。修行のためやせ衰えても、眼光の鋭さを失わない釈迦の厳しい顔は、立体感が丁寧に整えられ、雪山を行く人や馬の帽子や馬具は金色で細かく装飾されています。一方で釈迦の背景の枯れ木は、遊びのある激しい筆線で構成されます。また雪景山水図で旅人の後ろにそびえる雪山には、ひっかくような粗い筆線が目立ちます。緻密さと荒々しさ、梁楷の二方向での表現が見事に結びつけられた傑作です。