黄釉銹絵梅樹図大瓶
おうゆうさびえばいじゅずたいへい
概要
梅の木を水墨画のようにモノトーンであらわした大きな花瓶です。下の部分は柔らかに膨らみ、上の部分はキュッとすぼまって端正な形をしています。その作り方は、まず釉薬というガラスを多く含んだ液をかけ、白い花瓶を焼き上げます。次に、梅の幹や花の細かい部分を、鉄分を多く含む絵の具で描き、その前後に黄色に発色する釉薬を梅の木の外側にかけ、再び焼いて仕上げているようです。梅の花やつぼみは、確かな筆致によって実に可憐にあらわされ、枝にはしなやかさを感じさせます。また、黄色い地のなかで咲く白い梅の花は鮮やかです。作者の初代宮川香山は、江戸時代の終わりに京都に生まれ、明治時代になると横浜で海外に向けて陶磁器を盛んに作りました。この作品は、明治26年(1893年)にアメリカで開催された、シカゴ・コロンブス世界博覧会に出品されたもので、その端正な形や高度な釉薬の技法は、当時欧米で流行していた中国のやきものの影響を強く受けています。香山の巧みな技術によって生み出されたこの格調高い花瓶は、世界の人々を魅了したのです。