禅院額字「釈迦宝殿」
ぜんいんがくじ「しゃかほうでん」
概要
寺院の仏殿や門にはしばしば大きく文字を表した木製の額が掲げられています。その文字は、たんに筆で書かれたものではなく、多くは文字の形にあわせて浮き彫りにしたり、あるいは彫りくぼめたりして表されます。その元となる手本の字が額字です。
この作品は、無準師範(ぶじゅんしばん)という禅僧が記した額字で、弟子の円爾弁円(えんにべんえん)に贈ったものです。4つの文字は、釈迦仏を安置する宮殿という意味を表しています。筆者の無準師範(ぶじゅんしばん)は中国、南宋時代に活動した、禅宗の一派、臨済宗(りんざいしゅう)の僧です。無準が多くの中国僧、日本僧を弟子として育てる中に、中国にわたって禅を学んだ円爾弁円(えんにべんえん)もいました。円爾(えんに)が福岡の博多にある承天寺(じょうてんじ)を開いたさい、無準はそのお祝いに、仏堂に懸ける額や、牌(はい)と呼ばれる看板のため、こうした墨跡(ぼくせき)をしたため、贈ったといわれています。
無準師範の自筆と考えられ、中国南宋時代の大文字の墨跡として、また日中の禅僧の交流をゆたかに物語る資料として、たいへん貴重な作品です。そののち京都の東福寺(とうふくじ)に伝来したことがわかっています。