西広貝塚出土骨角貝製装身具
さいひろかいづかこっかくかいせいそうしんぐ
概要
西広貝塚は、縄文時代後・晩期の、房総半島の東京湾沿岸に分布する大規模貝塚の一つである。昭和47年(1972)から昭和62年(1987)にかけてほぼ全域が発掘調査され、発掘された貝層全てを水洗することにより、総数約5,600点の骨角貝製品を検出した。これら骨角貝製品には、銛頭、釣針、ヤス等の利器も含まれるが、その中心は約3,760点出土している装身具である。
西広貝塚の骨角貝製装身具には、髪針、垂飾、腕輪、腰飾等がある。この中で垂飾が最も多く、素材となる骨、牙、貝の形状を活かしたものに加え、玉状、管状、札状に加工したものもある。素材からみると、骨角製品には、サメなどの魚類、ウミガメ類などの爬虫類、カモ類などの鳥類、シカ、イノシシをはじめ、キツネ、ムササビなどの陸獣、イルカ、アシカなどの海獣といった様々な動物の骨、角、歯牙が利用され、自然界のあらゆる舞台に暮らした縄文人の特色をよく表している。これらの中にはムササビのように現在房総半島に生息しない種も含まれ、当時の動物の生息域や縄文人による動物利用の様相を推測する資料としても重要である。